トランプ自伝

今大統領選で話題になっているトランプ氏が気になり「トランプ自伝」読んでみました。批判的な意見や自分がどう思われているかを認識して行動しているんですね。また取引での駆け引きは人間心理をよく理解しており、不動産王になった理由がわかります。

「トランプ自伝」

私は金のために取引をするわけではない。金ならもう十分に持っている。一生かかっても使いきれないほどだ。私は取引そのものに魅力を感じる。私は取引をするのが好きだ。それも大きければおおきいほどいい。私はこれにスリルと喜びを感じる。

最近では私がドナルド トランプだというだけで、だれもかれもが私を訴えたがる。

私がこうしたさまざまな会でスピーチや司会を依頼されるのかはわかっている。私が素晴らしい人物だからというわけではない。慈善団体の主催者は、私には金持ちの友達がいて、その人たちに夕食会の券を買ってもらえることを知っているからだ。

私はカジノビジネスが好きだ。何よりも気に入っているのはもうけが大きい点だ。この商売のことがよくわかっていれば、ほどほどにうまく運営するだけでかなりの収益をあげられる。非常にうまくやれば、莫大な金をもうけることができる。

私は悪役を演じなければならないこともある。

第一に、書類の上でどんなによさそうに見える話でも、自分自身のカンに頼って判断すること。第二に、総じて自分のよくしっている分野でビジネスをするほうがうまくいくこと。そして、第三は、時には投資を思いとどまることも利益につながるということだ。

「私ほど将来きみたちに仕事のチャンスを与えてやれる人物は他にはいないんだぞ。他のやつらがみんな破産しても、私だけは建設を続けられる。だからとにかくこの仕事はちゃんとやってくれ、いいな」

強硬な態度をとるとそれなりの効果があるものだ。

私の取引のやり方は単純明快だ。ねらいを高く定め、求めるものを手に入れるまで、押して押して押しまくる。取引をうまく行う能力は、うまれつきのものだと思う。いわゆる天職の才だ。これは知能の高さとは関係ない。多少の知力は要するが、一番大事なのはカンだ。天職の才に恵まれ、カンがよく、成功すると思われる人には私の助言にしたがってほしくない。私の強敵が出現することになるからだ。

私はギャンブル好きだと思われている。だが私は博打を打ったことは一度もない。わたしにとって博打打ちとは、スロットマシンをする人間にすぎない。私はスロットマシンを所有するほうを好む。博打場の経営はもうかる商売なのだ。私は積極果敢な考え方をすると人は言う。だが実際には、私は消極的な考え方を良しとする。商売ではきわめて慎重なほうなのだ。つねに最悪を予想して取引にのぞむ。最悪の時代に対処する方法を考えておけば、放っておいてもうまくいく。最悪を予想して、最高を手に入れる。

市場に対するカンの働く人と働かない人がいる。

最新技術によるマーケットリサーチも信用しない。私は自分で調査し、自分で結論を出す。何かを決める前には、必ずいろいろな人の意見をきくことにしている。コンサルティング会社に依頼すると長々と調査を行って膨大な料金を請求する。しかし結局何の結論も出さない上、調査にひどく時間がかかるので、有利な取引を伸ばしてしまうことになる。その他に、私が本気でとりあわない相手は評論家だ。私の計画の邪魔になる時以外は、連中のことは気にしない。

取引で禁物なのは、何が何でもこれを成功させたいという素振りを見せることだ。こちらが必死になると相手はそれを察知する。相手が望むものを持つことだ。もっといいのは相手が必要とするものをもつこと。しかし常にことらがそうしたものをもっているとは限らない。したがってレバレッジを利用するには、想像力とセールスマンシップを働かさなくてはならない。つまり、この取引は得になる、と相手に思わせるのだ。

宣伝の最後の仕上げははったりである。人々の夢をかきたてるのだ。人は自分では大きく考えないかもしれないが、大きく考える人を見ると興奮する。だからある程度の誇張は望ましい。これ以上大きく、豪華で、素晴らしいものはない、と人びとは思いたいのだ。私はこれを真実の誇張と呼ぶ。これは罪のないホラであり、きわめて効果的な宣伝方法である。

私は必要なことには金を出すが、必要以上には出さない主義だ。今でも下請け業者の請求額が高すぎると思うとたとて一万ドルでも5千ドルでも電話でクレームをつける。「わずかな金のことでなぜ騒ぎたてるのだ?」という人もいる。だが私は、25セントの電話代をかけて一万ドルの金を倹約することができなくなったら、そのときは引退する、と答える。

大事な取引をする場合は、トップを相手にしなければラチがあかないのだ。その理由は、企業でトップでない者はみな、ただの従業員にすぎないからだ。従業員は取引を成立させるために奮闘したりしない。賃上げやボーナスのためには頑張るが、上司の機嫌をそこなえるようなことはしないよう気をつける。

金を持つ者が気前よくするのはたやすいし、金がある者はそうすべきだ。しかし私が最も尊敬するのは、直接自分で何かをしようとする人たちだ。人がなぜ与えようとするのかについてはあまり関心がない。その動機にはたいてい裏があり、純粋な愛他精神によることはほとんどないからだ。

トランプが人間心理に対する洞察力を持つことも、彼のビジネスを成功させている要因だ。

大統領選挙へ出馬することも絶対にないとは言いきれません。

トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ (ちくま文庫)