浮気で産みたい女たち

「不倫は科学」という竹内久美子さんの本です。浮気に関して、多くの動物や人間の行動などを研究しておられます。研究内容は話が長くなるので以下簡単な部分を抜粋しましたが、本書では、まさに科学といえる細かい統計データーにもどついて浮気に関する研究されているのは驚きでした。よくある浮気が良いか悪いかと議論するものではなく、研究といった感じです。

「浮気で産みたい女たち」
人間の社会がたいていの場合に一夫一妻、あるいは一夫多妻の婚姻形態をとっていることは皆さんよくご存知の通りである。少なくとも乱婚的ではない。しかし、一方、それら婚姻形態が表向きのものでしかないということも皆さんよくご承知のはずである。

男には大きく分けて二つのタイプがある。一つは文科系男である。この男の特徴は何と言っても口がうまいこと。言語能力長け、女を口説き落とす事に並々ならぬ意欲を燃やしている。彼は女の扱いに慣れており、女を喜ばせる術を心得ている。人間として華やかであり、面白い。当然というべきか、パートナーがいても平気で浮気をする。彼の女は常に複数である。それが彼の大いなる自慢である。社交的で人当たりもよい彼は、口のうまさと相まって出世をし、高い社会的地位につくことがしばしばである。むろんのこと収入も多い。ただ女性スキャンダルで失脚したり、浮気が元で離婚に至る事がある。それでもこの男は懲りない。彼は体力、気力の続く限り女を追いかけ、浮気し続けるのである。いい奴なのだが、浮気だけは収まらない。

もう一つは理科系だ。こちらは打って変わって大変な口べたである。ギャグはすべり、面白みに欠け、女にしてみれば物足りない存在である彼の美点、それは何と行っても浮気をしないことだ。真面目で誠実、子育てなどもよく手伝ってくれる。しかし社交的ではなく口もうまくない彼が社会でどんどん出世するかといえばそうはいかず、収入はお世辞にも多いとは言えない。理科系の才能が備わっており、ちょっとした家電製品の修理ならお手の物、それに子供の宿題や算数や理科の問題もスイスイ解いてくれる。実に便利な存在なのである。

社会階層ごとの妻の寝取られ率というものが調べられた事がある。それによると、地位の高い男ほど妻を寝取られにくく、しかも自分は他人の妻を寝取る側に回る。そのターゲットはたいていは地位の低い男の妻なのである。そこで彼らは意識的にか、無意識的のうちにか反撃行動にでようとする。浮気はよくないことだ、浮気するなどということは人間として最低の裏切り行為である、などといった考えを抱くのである。そして、自分でも気づかぬうち浮気をする男性の繁殖活動を妨害するのだ。そして、もちろん、かの男たちの毒牙から他ならぬ自分の妻を防衛しようとする。

女は地位や財力という魅力を感じ取り、子を生み分ける。一代で財をなした男というように、能力がはっきりと証明されるような場合にはより頻繁に息子を産むのである。セイシュルヨシキリの鳥の夫婦などは、貧しかった頃の数年間は息子を六羽産んだのに対し、娘は一羽も産んでいなかった。ところがリッチになると、今度は息子を全く産まない代わりに娘ばかり十二羽も産むようになったのである。

夫婦の離婚原因の第一は「性格の不一致」ということだが、この何だかあいまいな理由の中に、夫の暴力というものが実はかなりの割合を占めているのだという。世間体ゆえに女がなかなか明らかにしないことらしい。女はクリスマスで興奮すると妊娠しやくなるといわれている。男の暴力とは、彼自身さえ気がついていないことだが、女の排卵を促し、妊娠の確立を高めようとする行為ではないのか。暴力とはSMについて考えてみたのと同様、単なる暴力ではないこともあるはずである。女に暴力を振るうなど、むろん男として最低の行為である。しかしただただ最低の行為である暴力が、単に女を傷つけ、苦しみを与えるだけのものだとしたら、なぜそんな行為が存在するのか。「男の浮気と借金と暴力は、病気だから治らないわよ。絶対に!」とアメリカの番組で中年婦人が若い女性に向かってこう忠告していた。夫婦ゲンカというのも排卵にとって結構重要なのではないかと思う。お互い感情は爆発し、女は軽く傷ついたりもする。排卵はおおいに誘発されるはずなのである。仲のいい夫婦にはなかなか子ができないという。それは、こういうふうに、派手にケンカすることで排卵が誘発されるという機会が少ないからではあるまいか。

妻が浮気をし、初めてわが子を得る事ができたのである。子ができなくて悩んでいる男性、一度奥さんに浮気してもらうなんて方法はいかがなものでしょう。

女は必ずしも理想の相手と結婚しているわけではない。相手は往々にして今ひとつの、魅力に欠ける男である。その不満を補うのが浮気だ。

ヨーロッパなどで未婚のまま子を持つケースは珍しくない。スウェーデンでは、戸籍がなく住民票。家族単位ではなく、個人単位。税金も個人、配偶者控除も関係ない。同居していたカップルであれば、家具などの財産を平等に分配できる仕組みになっている。もはや結婚とな何ぞや、ということになるのである。女は浮気にときめく。そんな人間らしさを、人間は人間の英知によって失わぬことを私は願ってやまないのである。

浮気の最大の問題点は、女は浮気をすると夫の子ではないかもしれない子を宿すのだ。何も女を差別しようとしてのことではなく、女の浮気の方がより事態は深刻である。

私たちのここまでの産業の成功は、人間がよりよく生き延びることか、よりよい大人の遊びをすることに到達する手段でしかないと、私は思う。

「不倫は科学」なのだ。

浮気で産みたい女たち―新展開!浮気人類進化論 (文春文庫)