奥さんをアップグレード、旦那をエンハンスメント

アメリカのシリコンバレーと日本に住んだことがある人は面白い本かも。著者もアメリカへ駐在で来られた方で、日本の働き方に不満があるような表現が多数ありました。 以下の、お金持ちの「アップグレード」「エンハンスメント」のニュースはよく聞きますね。テスラーの社長イーロンさんもモデルさんの次は女優さんでしたっけ。

「アメリカ人はなぜ明るいか?」
このあたりの高校生はお金のかかるガールフレンドを「ハイ メンテナンス コスト レディ」といい、自分の彼女のメンテナンスにいかにお金がかかるかを自慢の為にする。「ハイ メンテナンス コスト レディ」をもつ息子の親父は、そろそろくたびれてきた古い嫁さんにしこたま金を払って離婚し、新しい若いピチピチの嫁さんをもらうことを「アップグレード」といっているぐらいだ。別れた古い嫁さんのほうも、そろそろバイアグラが必要になってきた旦那には相当飽きがきており、しこたまもらったお金で、ムキムキの若い男を囲う。これを称して「エンハンスメント」という。

シリコンバレーベンチャー企業のオーナーは、業務用小型トラック、またはジープをのる。なぜかというと贅沢な車を乗り回していると仕事に不熱心と見られ、会社の格付けが下がってしまう。成功して大富豪になっても、質素な生活を世間は高く評価した。しかし、パーティー出席用の高級車は7、8台は自宅のガレージに入っている。

シリコンバレーで解雇なった課長は、ストックオプションをもらっているので、解雇はちょうどよい機会だという人もいる。会社をクビになってローンを抱え、なすすべなく真っ青になっている日本のサラリーマンとは比較もしたくないが、アメリカ流の厳しい経営は、アメリカ並みの豊かさがあってはじめて成り立つもの。

この課長さんにとって、日本のサラリーマンがなぜ夜中まで会社のために働くのか不思議でたまらないらしく、たいしてお金にならないなら、そこまで出世する必要もないのではないかというのだ。日本の課長の椅子がよくなるだけ、それはサル山のボスが尻尾を高く持ち上げて集団のなかの序列を確認する行動と同列といえるだろう。

日本の会社の場合、同期入社ならば、ある年齢がくると同じように社内で昇進し、嫌でも全員が部長や課長になる。ところが社長まで行くのは、自分の入社時期の前後5年ぐらいのなかで一人だけ。競輪や競馬で一着になる確立以下だが、最後まで差をつけずに気をもたせるようにして猛烈に競争させる。

日本の場合は、取締役になったほどの人でも最後は子会社に天下りしかない。天下った会社でも、どちらかというときてほしくない。きわめて寂しいサラリーマン人生の幕切れとなる。アメリカでは、部長クラスの人間が退職したらベンチャー企業が放ってはおかない。日本の会社員は、自分が社長になると思っているので、会社が傾いても最後まで会社に協力する。アメリカの社員は、会社が傾いたらすぐにライバル会社に行く。そのため、日本のシステムの方が経営がやりやすい。

アメリカの日系企業に日本人が多いのは、アメリカ人はすぐに訴訟問題をおこすため。

アメリカ人は、企業に対する忠誠心が低く、日本人は高いというが、日本人は、せざるをえない状況にあるから。それは、日本の企業は、社員に高度の専門性を持たせない。転職をすると年収が下がる。社員は住宅ローンなどの巨額の負債を抱えており、その返済に迫られるから。アメリカ人でも同じ状況なら忠誠心が高くなるはず。

アメリカの日系企業では、アメリカの天才に、みんなと同じようにラジオ体操をさせようとするので、すぐに優秀な人材は逃げ出してしまう。片言の英語しか話せない日本からの派遣幹部に、従業員との満足な意思疎通ができるはずもなく、革新的な発想を育てることもできず、結果はかえって人材流出を加速することになる。

日本で優秀な技術者の条件とは、優秀な技術的素養はもちろんだが、金持ちであること。どんなに優秀な人材でも社内の議論で意見を引っ込めてしまう。上司に歯向かって、左遷されても家族を悲しませるだけになるため。シリコンバレーの技術者は頭とお金もある。

アメリカの住宅は経済がよければ値上がりするため一般国民の資産は、増える「リッチ アメリカ リッチ アメリカン」日本の場合は、経済が好調でも資産価値は増えず、物価が上昇しかえって生活が苦しくなる「リッチ ジャパン プア ジャパニーズ」

アメリカの投資のリターンは大きい。日本のサラリーマンは「働きバチ」として一生働き続けるしかない。日本のサラリーマンが貯めたお金を銀行にいれ、ほとんど金利はなく、銀行はその金でアメリカの株を買い、国債を買い、為替で大損して、経営に行き詰まり、サラリーマンの税金が銀行を救済するために使われる。ますますアメリカのサラリーマンは裕福になっていく。

アメリカ人がもっとも頼りにしているのは、401Kという自己責任の確定拠出型年金制度だ。アメリカでは、まったく出世しなくても、401Kで老後の元金は4億4千万円にもなることもある。現在アメリカの株式は絶好調だが、その背後には、じつはこの401Kの存在があると言われている。アメリカは、暴落があったとしても個人の年金資金の目的での投資の割合が大きいため、日本のようには崩壊しない。

日本では、貯金を増やすことに関しては、何か不労所得的でいかがわしいものという道徳観念が、知らず知らずのうちに植え付けられていた。投資は、リスクを追った立派な経済活動。ギャンブル性があるといっても、資本主義経済活動とは、そもそもギャンブルなのだ。

アメリカ人は、なぜ明るいか? (宝島社新書)